第51章
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る。「僕が訊きたかったのは――こいつを、八九寺を、お母さんのところに一体どうやったら連れて行ってやれるかって――それだけだっただろうが。最初から、それだけだっただろうが。そんな、知ったところで誰にも自慢できないような蘊蓄なんて、知らないんだよ。使いどころのない雑学なんて――脳の無駄遣いだ。大事なのは――そういうことじゃないだろう」阿良々木暦のことじゃない。あくまで、八九寺真宵のことだった。僕が離れればいいだなんて――違う。僕は離れては、いけないのだ。「……わかってるの? 阿良々木くん。その子――そこにはいないのよ。そこにはいないし、どこにもいないのよ。八九寺……八九寺真宵ちゃんっていうんだっけ。その子は……もう死んでるの。だから、もう、当たり前じゃなくて――その子は怪異に取り憑かれてるんじゃなくて、怪異そのもので――」「それがどうした!」怒鳴った。戦場ヶ原を相手に――怒鳴ってしまった。「当たり前じゃないなんて、そんなの、みんなそうだろうが!」「…………」僕もお前も――羽川翼も。永遠に続くものなんて――ないんだ。それでも。はくいんぼうしょううんちくどな187試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中「あ――阿良々木さん、痛いです」八九寺が、僕の腕の中で、頼りなげに、もがく。思わず、強く握り締め過ぎて、肩に食い込んだ爪が、痛いらしい。痛いらしい。そして言う。「あ、あの――阿良々木さん。この方の、戦場ヶ原さんの、言う通りです。わたし――わたしは」「黙ってろ!」何を喋っても――その声は戦場ヶ原には届かない。僕にしか届かない。けれど、その僕にしか聞こえない声で――こいつは最初から、こいつすらも最初から、自分は蝸牛の迷子なのだと、そう正直に――告げていた。精一杯、出来る限り、告げていた。そして、また――言っていた。最初の最初、一言目に。「お前には聞こえなかったんだったよな、戦場ヶ原――じゃあ僕が言ってやるよ。こいつは――僕に対しても、羽川に対しても、一言目からいきなり、とんでもねえこと吐かしやがったんだ――」話しかけないでください。あなたのことが嫌いです。「わかるか? 戦場ヶ原。ついてきて欲しくないからって――遭う人間全員に、そんな台詞を言わなくちゃいけない奴の気持ちが、お前にわかるってのか? 頭を撫でられそうになったら、その手に噛みつかなくちゃいけない奴の気持ちなんて――僕には全くわからないぞ」誰かを頼ればいいなんて――酷い言葉だ。自分自身がそんな存在だなんて。おかしいのが自分だなんて。そんなことは、言えるわけがないのに。「でも、わからなくても、それでも、自分が道に迷っているときに――一人でいるときに、そういうことを言わなくちゃならない気持ちを、それでも――僕もお前も、違う形で、経験してきているはずだろう。同じ気持ちじゃなくても、同じ痛みを抱えてきたはずだろう。僕は不死身の身体になったし――お前だって怪異を抱えた身体になった。そうだろうが、そうなんだろうが。だったら、迷い牛だか蝸牛だか知らないが――それがこいつ自身だって言うんなら、全せいいっぱいぬ188試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中然、話は変わってくるじゃないか。お前には見えないし、聞こえないし、匂いすらも感じないんだろうけれど――それでも、それだからこそ、こいつを無事に母親のところにまで送り届けるのが――僕の役目だ」「……そう言うと思ったわ」戦場ヶ原にそうするのは全くの筋違いでありながら、思わず怒鳴ってしまったところから、徐々に僕の頭も冷えてきて、自分が無茶苦茶なことを言っているのは、勿論、わかっていたが――しかし、戦場ヶ原は、それに対してすら、顔色一つ変えず、眉一つ動かさずに――僕に言った。「ようやく――実感できたわ、阿良々木くんのこと」「……え?」「阿良々木くんのことを、私、誤解していたみたい。いえ、誤解じゃないか。薄々というか、重々、それはわかってはいたことだけどね――幻想が消えたっていうのかな、こういうのは。阿良々木くん。ねえ、阿良々木くん。先週の月曜日、私の些細な失敗から、阿良々木くんに、私の抱えていた問題がバレちゃって……そうしたら阿良々木くんは、その日の内に、即日に――私に、声を掛けてくれたわよね」力になれるかもしれないと言って。僕は戦場ヶ原に、呼びかけた。「正直、私は、その行為の意味を計りかねていたのよ――どうして阿良々木くんがそんなことをしたのか。だって、そんなこと、阿良々木くんにとって、何の得にもならないじゃない。私を助けても、いいことなんて一つもないのに――どうしてかしら。阿良々木くんは、ひょっとして、私だから助けてくれたのかしら?」「…………」「でも、そうじゃなかった。そうじゃなかったみたい。そうじゃなくて、単純に、阿良々木くんって……誰でも助けるだけなのね」「助けるって……そんな大それたことじゃないだろ。大袈裟に言うなよ。あの状況なら誰だってそうするって――それに、お前も言ってたろ、僕はたまたま、似たような問題を抱えてて、忍野のことを知っていて――」「似たような問題を抱えてなくとも、忍野さんのことを知らなくとも、同じことをした――んじゃないかしら。忍野さんから聞いた限りだと」何を話した、あの野郎。あることないこと言い散らしたに決まっている。「少なくとも私は――住宅地図の前にいる姿を二度ほど見た程度で、知らない小学生に声をかじゅうじゅうささい189試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中けようとは思わないわ」「…………」「ずっと一人でいると、自分が特別なんじゃないかって思っちゃうわよね。一人でいると、確かに、その他大勢には、ならないもの。でも、それはなれないだけ。笑っちゃうわ。怪異に行き遭ってから二年以上、私の抱えている問題に気付いた人は、実のところ、たくさんいたけれど――最終的にどんな結果になろうとも、阿良々木くんみたいなのは、阿良々木くんだけだったから」「……そりゃ、まあ、僕は僕だ<p style="font-weight: 400;color:#af888c;">(继续下一页)六六闪读 663d.com
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