第9章

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    れたら、いまや即答の難しいところではあるけれど。「事前に連絡を入れておくべきじゃなかったかしら? 今更だけれど、こちらから相談事をしようというのなら」「その常識人みたいな発言には驚かされるばかりだけれど、残念ながら、携帯とか持ってないんだもん、あの人」「どうにも正体不明ね。不審人物と言ってもいいくらい。一体、何をやっている人なの?」「詳しくはわからないけれど――僕や、戦場ヶ原みたいなのを、専門にしているんだって」「ふうん」全然説明になっていない説明だったが、それでも、戦場ヶ原は追及してくるようなことはしなかった。どうせもう会うのだからと思ったのかもしれないし、訊いても無駄だと思ったのかもしれない。どちらも正解だ。「あら。阿良々木くん、右腕に時計をしているのね」「ん? あ、うん」「ひねくれ者なの?」「先に左利きかどうかを訊け!」「そう。で、どうなのかしら」「…………」ひねくれ者だった。四階。元が学習塾なので、教室めいた造りの部屋が、三つあるのだが――どの教室も、扉が壊れてむ ごうかんけいたい? ?32試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中しまっていて、廊下まで含めて一体化している状態。さて忍野はどこにいるのだろうと、まずは一番近場の教室を覗いて見たら、「おお、阿良々木くん。やっと来たのか」と。忍野メメは、そこにいた。ボロボロに腐食した机をいくつか繋ぎ合わせ、ビニール紐で縛って作った、簡易製のベッド(とも呼べないような代物)の上に、胡坐をかいて、こっちを向いていた。僕が来ることなど分かりきっていたという風に。相変わらず――見透かしたみたいな男だ。対して、戦場ヶ原は――明らかに、引いていた。一応事前に伝えてあったとはいえ、忍野のその汚らしい風体が、今を生きる女子高生の美的基準を大きく逸脱しているのだろう。こんな廃墟で暮らしていたら、誰だってあんなボロボロのナリにはなるのだろうけれど、それでも、確かに男子の僕から見ても、忍野の見てくれは、清潔感に欠けているとは言えた。清潔感に欠けていると言うしかない、もしも、正直であろうとすれば。そしてそれより何より、サイケデリックなアロハ服というのが致命的だ。いつも思うことだけれど、全く、この人が自分の恩人だっていうのは、なんか、ショックだよな……。羽川あたりは人間ができているので、そんなこと、毛ほども気にしないようだけれど。「なんだい。阿良々木くん、今日はまた違う女の子を連れているんだね。きみは会うたんびに違う女の子を連れているなあ――全く、ご同慶の至りだよ」「やめろ、人をそんな安いキャラ設定にするな」「ふうん――うん?」忍野は。戦場ヶ原を、遠目に眺めるようにした。その背後に、何かを見るように。「……初めまして、お嬢さん。忍野です」「初めまして――戦場ヶ原ひたぎです」一応、ちゃんと挨拶をした。無意味に毒舌というわけでもないらしい。少なくとも年上の人間に対する礼儀礼節は弁えているようだ。「阿良々木くんとは、クラスメイトで、忍野さんの話を教えてもらいました」「はあ――そう」のぞひもあぐらみすいつだつ? ?あいさつわきま33試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中忍野は、意味ありげに頷く。俯いてから、煙草を取り出し、口に咥えた。ただし、口に咥えただけで、火はつけない。窓も、既に窓として機能していない、ただの中途半端な硝子の破片だが、忍野は煙草の先で、その向こうの景色を示すようにした。そして、たっぷり間を空けてから、僕を向く。「前髪が直線な女の子が好みかい、阿良々木くん」「だから人を安く見積もるなって言ってるだろ。前髪直線が好きって、そんな奴普通に考えりゃただのロリじゃねえかよ。思春期と共に『フルハウス』があったてめえの世代と一緒にするな」「だね」忍野は笑った。その笑い声に、戦場ヶ原は眉を顰める。ロリという単語に気分を害したのかもしれない。「えっと――まあ、詳しい話は本人から聞いてもらえばいいとして、とにかく、忍野――こいつが、二年前くらいに――」「こいつ呼ばわりもやめて」戦場ヶ原は毅然とした声で言った。「じゃあ、何て呼べばいいんだよ」「戦場ヶ原さま」「…………」この女、正気か。「……センジョーガハラサマ」「片仮名の発音はいただけないわ。ちゃんと言いなさい」「戦場ヶ原ちゃん」目を突かれた。「失明するだろうが!」「失言するからよ」「何だその等価交換は!?」「銅四十グラム、亜鉛二十五グラム、ニッケル十五グラム、照れ隠し五グラムに悪意九十七キロで、私の暴言は錬成されているわ」「ほとんど悪意じゃねえかよ!」「ちなみに照れ隠しというのは嘘よ」うつむ たばこ くわガラスまゆ ひそくわきぜんあえんれんせい34試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中「一番抜けちゃいけない要素が抜けちゃった!」「うるさいわねえ。いい加減にしないとあなたのニックネームを生理痛にするわよ」「投身モンのイジメだ!」「何よ。文字通り生理現象なのだから、恥ずかしいことではないわ」「悪意がある場合は別だろう!」その辺で満足したらしく、戦場ヶ原は、ようやく、忍野に向き直った。「それから、何よりもまず、私としては一番最初に訊いておきたいのだけれど」忍野にというより、それは僕と忍野、両方に問う口調で、戦場ヶ原はそう言って、教室の片隅を指さした。そこでは、膝を抱えるようにして、小さな女の子、学習塾というこの場においてさえ不似合いなくらいの小さな、八歳くらいに見える、ヘルメットにゴーグルの、肌の白い金髪の女の子が、膝を抱えて、体育座りをしていた。「あの子は一体、何?」何、というその訊き方からして、少女が何かであることを、戦場ヶ原も察している<p style="font-weight: 400;color:#af888c;">(继续下一页)六六闪读 663d.com
    
    

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