第85章

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    勿論あるだろうが、それは羽川翼の、壮大な失恋旅行とも、考えられる――羽川が頭痛を催したのは、進路の話をした、その直後だ。そして。あいつは、あのとき、目を閉じて、僕に唇を――「いつから――だ?」「春休みからだにゃ。俺が現れるよりも前のことににゃるから、心の機微とかはよくわかんねーけど、常に逼迫した環境に生きていたご主人にとって、人間と吸血鬼の物語は、いかにも荒唐無稽で、自身の置かれている立場を打破してくれるパワーを持っていそうにも見えただろうにゃ」「打破なんて――」そんなこと。僕はあのとき、一杯一杯で――「でも、まるっきり兆候がにゃかったというわけじゃにゃいと思うにゃん。ご主人は、そういうところ、ほとんど完璧だったけれど――話が恋愛関係だったから緩むところもあったんだろうにゃ。お前、おかしいとは思わにゃかったのか? 真面目一徹の委員長が、副委員長にお前みたいにゃ奴を選ぶか? それは普通に考えれば人選ミスだろうにゃ」「あ……いや」人選ミスだけど。でも、それには理由があった。「お前を不良と思い込んで更生させようとしたというのは、理由ににゃってるようで、あんま理由ににゃってにゃいようにゃ気がするにゃあ?」「それは――」あのとき――四月の初め、羽川は、多少はあった反対案を、半ば強引に押し切るように僕を推薦し、副委員長に任命した――その人選は、少なからず、クラスから反発を買ったはずだ。もよおひっぱく301試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中僕は当事者だからそうは思わなかったし、『責任のある立場につけば人間は成長する』といった羽川の言葉を鵜呑みにしていたけれど、そういった権力による力押しを、そういえば、羽川は何より嫌ったはずではなかったのか――「じゃあ、どうして」「お前と少しでも一緒にいたかったからに決まっているにゃ。三年生前半の委員長副委員長と言えば、高校生活最後の文化祭を、一緒に準備することににゃるもんにゃあ……まあ、そういったアピールが続いたのも、一ヵ月前までにゃ。ご主人にゃりに、ちょっとずつ、ちょっとずつ積み重ねていた恋愛は――そこで終わった。にゃはは、いや、そこからが本番だったというべきにゃのかにゃ?」「………………」あのとき羽川は――喜んでくれた。そう思っていた。けれど――それも、嘘か。嘘なんかついたことがない――違う。だとすれば、お前の言うことは嘘ばっかりだ、羽川翼――!「正直、俺に言わせりゃ、ご主人の油断もあったと思うんだよにゃあ。ご主人は、ライバルの出現にゃんて、まるで予想だにしてにゃかったんだから。ゴールデンウィークにご主人がそうされたように、お前が誰にでも優しいということを知っていれば――自分と同じように、お前に救われる人間も出てくるということを考えてさえいれば、賢いご主人のことにゃ、もっと早く手を打っていたはずにゃん。そこへ行くと、お前が今付き合ってる女は電光石火だったよにゃあ?」「確かにそうだな……」戦場ヶ原は――迷わなかった。決意をすると、一気に攻めて来た。普通なら引くくらいの手際で、だ。「冷めた家庭に育った女の子。彼女が春休みに衝撃的な出会いをした、非日常の存在は同級生だった。運命的なものを感じる。ほのかに募る恋心。そして今度は自らの命を助けられ――恋は確信へと変わる。とか。にゃはははは、にゃんつって、これが少女漫画だったにゃら、確実にご主人が主人公にゃのに――見事にというか、無様にというか、とんびに油揚げを捜われた格好にゃ」「先制攻撃にかけて、戦場ヶ原の右に出る者はいないから――スタートが遅れたことなんて、あいつにとっちゃハンデにもならないだろう」? ? ? ? ? ? ? ? ? ?つのさら302試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中あるいは――戦場ヶ原は、羽川のそういう気配を、僕に鎌を掛けてくる程度には気付いていたからこそ、あの母の日、あれほど性急とも言えるような速さで、ことを進めたのかもしれない。そう考えれば、戦場ヶ原が羽川に対して置いている、変な距離の説明がつかなくもない――でも。それは戦場ヶ原が悪いわけじゃない。そんなこと、そもそも勝負じゃないのだ。「ま、どうだったとしても後の祭りにゃ。ご主人は人のものを盗れるような性格ではにゃいのに、純粋にゃ、少女漫画みたいにゃ恋愛だったはずが、ただの横恋慕に早変わり。仕舞いには横恋慕、岡惚れ……そういう自分に罪悪感を覚える始末にゃ」「真面目な――奴だから」千石の件のときにあったような、惚れた腫れたの話を、躇躇なく実践できる奴じゃない。だからといって都合よく、自分の中で折り合いをつけられる人間でもない。自分自身に対して、妥協や譲歩ができる人間ではない。「後悔もあっただろうにゃ――自分がもっと早く告白していれば、とか。でも、そんにゃ早い者勝ちみたいにゃ話じゃにゃいのは事実だし、そんにゃ風に考えること自体が、卑小で、滑稽で、つまらにゃい人間だにゃ――」でも。そんなことは、おくびにも出さず。応援してくれ――相談に乗ってくれ。そうだったのか。応援してくれているときも、相談に乗ってくれているときも、あいつはいつだって、自分のことを言っていたのだ――男女間の機微に関して一家言あるのは当然だ。あいつ自身が、恋する女の子だったなら――誰よりも、戦場ヶ原の気持ちが、あいつにはわかったのだろう。「まあ、そうだったからこそ、お前はゴールデンウィークのときも、ご主人のストレスのトリガーににゃったんだろうけどにゃ。お前にだけは知られたくにゃかったのかも――にゃ」「じゃあ――」必要なときにそこにいる――どころか。僕はあのとき、もっとも必要とされていない、邪魔な人間だったということだ。「鈍いお前はご主人の好意にも葛藤にも気付く気配もにゃく、ご主人のストレスは溜まりに溜まる一方――まあ俺に言わせれば、一ヵ月、よく持った方だと思うにゃん」よこれんぼひしょう303試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中試用中「いや、猫、ちょっと待てよ。それって――おかしくないか? 確かにお前の言う通り、僕が<p style="font-weight: 400;color:#af888c;">(继续下一页)六六闪读 663d.com
    
    

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